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事例報告のご紹介

事例報告
事例報告5
Mさんに声をかけたのはJR大阪駅前でした。 私たち(社員)は、ほぼ毎週のように夜の8時過ぎごろJR大阪駅前に声かけをしに行っていたのですが、Mさんに会ったのはその日が初めてでした。 いつものように声をかけようとして、炊き出しの列の一番前に並んでいたのがMさんでした。 チラシを渡して、簡単にマンションの説明をしてから年齢を聞くと、65歳とのこと。 65歳だったら生活保護が受けられることを説明し、今日これからでもマンションに入居できるので、一緒に行こうと言いました。 「とにかく今日一晩だけでも泊まっていったら?」と言うと、Mさんの反応は半信半疑といった感じでした。 しかし、それまでの経験からして、ほとんどの方がそのような反応を示します。 とにかくそのままマンション(グレース)に一緒に行き、もう夜が遅かったので詳しい話は次の日にすることにしました。
次の日のMさんも前日と特に変わった様子もなく、あまり表情のない感じでした。こちらが質問することにはしっかりと答えてくれますが、 どこか感情がこもってないような感じです。その後、Mさんは無事に生活保護の申請が受理されました。
それからしばらくして、グレースで誕生日会を行ったときのことです。Mさんも参加されていて、私はそれだけでとてもうれしく感じました。 最初にマンションの説明をしたときは、イベントにはあまり関心のないような感じだったからです。 誕生日会のときのMさんは、他の入居者とも協力しながら、とても楽しそうにしていました。私はそのとき初めて、Mさんが笑っている姿を見ました。 「Mさんはこんな表情もするんだ」と、とてもうれしく感じたのを覚えています。自分が声をかけた人がこんなにも穏やかに、楽しそうにしている姿を見て、 心から満足した気持ちになりました。
また、それからしばらくして生活保護の支給日に銀行でMさんに会ったとき、「お金が入ったから、これから炊飯器やポットを買いに行く」と、 とてもうれしそうに話してくれました。大阪駅前で声をかけたときとは見違えるほどに表情が変わったな、と思いました。 それ以外でも、たまにマンションで会うときは、必ず挨拶をしてくれます。時には冗談を言うこともあります。 一人の人間が数ヶ月間でこんなにも変わるものなのだなと思ったとき、うれしさと共に自分の仕事の責任の重さを実感しました。
Mさんのケースは他の入居者と比較しても、非常にうまくいったケースです。これまでに様々な困難ケースにも出会いました。 声をかけてもそっけなく無視されたり、せっかく声をかけて生活保護の申請が受理された人が行方不明になってしまったり、 申請までにいくつものハードルを乗り越えなければならなかったこともあります。 そのハードルが重荷になって、行方がわからなくなった方も何名かいらっしゃいます。それでも、いくつもの困難を乗り越えて、 申請が受理された方には、「お疲れさまです。とりあえずこれで一安心だね。お金、大事に使ってね。」と声をかけています。 この一言が言えることを楽しみに、区役所に行っているようなものです。
確かに、アウトリーチはつらい仕事です。何人もの人に声をかけて、65歳以上の方が誰もいなかったり、 せっかく興味を持ってくれた人が65歳の誕生日まであと1年以上あり、何のお手伝いもできなかったり、むなしくなることの方が多いくらいです。 しかし、そんな中でも「ありがとう。がんばってね。」と声をかけて下さる方も何人もいました。それぞれの人がそれぞれの事情を抱えて生きています。 アウトリーチを通じて私が学んだことは、(ごく当たり前のことですが)、いろいろな人生があるということ。 そして、人間は変わることができるということ。時に私たちは、自分の価値観からある人の人生を評価してしまうことがありますが、 その人生の背景にあるものは、その人と丁寧につきあっていかないとわからないものです。 今、この事例報告を書きながら、自分がいかに先入観を持って人と接していたか、あらためて反省させられました。 アウトリーチを通じて、私は本当にたくさんの人と出会い、そこから多くのことを学びました。 この仕事をしていなければ、おそらく一生出会うことのなかった人たちです。 この経験を大切にして、これから日々の仕事に取り組んでいこうと思っています。

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